不登校とひきこもりの心理 ~完璧主義~
不登校・ひきこもりのお子さんをもつ親御さんからお話を伺う中で、よく伺うのが「うちの子は完璧主義」というお声。「全て出来ていなかったら、やらない」という行動をよくとるというのです。このような「完璧主義」の不登校やひきこもりの心理とは一体どのようなものでしょうか?
各々の性格や過去の経験によっても異なるのではないかと思いますが、完璧主義になってしまう心理として、その背景に「恐怖」があることが考えられます。「完璧でない自分の状態を他人がどのように評価するのか?」という「恐怖」が完璧主義に陥ってしまう不登校・ひきこもりの心理で最も多いと思われます。勿論、神経回路の話や性格的に職人気質というような例外もよくありますが、往々にして「『正解』や『〇』でない自分を他人はどのように評価するんだろう?『×』に見られるのは嫌だな」という心理が、よく不登校・ひきこもりのお子さんから見受けられます。小さい頃から親御さんや周囲の人から過度の期待をかけられ、それに応えよう応えようと頑張り続けた結果、「完璧でないといけない」という心理をもつに至ったケース等もよくあるお話です。アスリートや芸術家のように、「完璧な状態になりたい」という積極的なものではなく、「完璧じゃないと何が起きるか分からない」という、「恐怖」から「避ける」という行為を本能としてとっているケースが多い印象をもっています。
では、完璧主義の不登校・ひきこもりの心理が他人から「×」と評価されることの恐怖だとした場合、私達、大人はどのようにサポートできるのでしょうか?「他人の目は関係ないから」とお子さんにアドバイスしても、全く受け入れられなかったというご経験、すでにされている親御さんも多くいらっしゃるのではないかと推測します。
もし、今、不登校やひきこもりのお子さんが「他人の評価」に怯えているとしたら、ただ「自分は他人の評価に怯えているんだ」という事実をまずは受け入れることから促していきたいと思います。「他人の評価に怯えるな!」と否定するのではなく、怯えてもいいので「怯えている」という「事実」を受け入れられるように促してほしいんです。この「怯えている」という「事実」を受け入れだすと『「〇」ではない私』を受け入れだす心理へと変化していきます。
不登校・ひきこもりのお子さんが「恐怖に怯えている自分」に気づき、そんな自分を受け入れだすと、他人の評価は未だ気になりますが、その恐怖の度合いが軽減し、次の一歩目に繋がる行動をとることが少し容易になっていきます。なぜなら、自分の思考に気づき、その事実を否定せずに受け入れ出すと、コンセントに差し込まれたプラグが抜け落ちるかのように、その思考や感情から受ける影響がゆるまってくる特性があるからです。
「〇」でない自分、でも「×」ではない自分。
他人の評価が気になるのは、人間が社会的動物である以上、至って自然なことです。他人の評価が気になることで怯えてしまっている自分の心理に気づくこと、その怯えている自分を受け入れることで他人の評価を気にしながらも、少しずつ行動に移せる「不完全」な「△」の自分へと変化していきます。そのため、完璧主義に陥ってしまっているお子さんが「〇〇じゃないんだったら、〇〇しない」と発言していたら、「そうだよね、〇〇じゃなかったら、怖いよね。そう感じるのも自然だよね」と共感しながら、自然なことだよと否定せずに受け入れる方向で促してみてほしいなと思います。ここでは、「完璧主義」に陥る心理的な背景とその対処法としての「恐怖の受け入れ」について話してみました。この「完璧主義」という心理は、「他人の評価への恐怖」に繋がることもある一方、ある状況では、物事を理想に近づけようと努力できる「強み」としてプラスに働くこともある資質です。この資質とうまく付き合っていけるよう、まずは認めることから促していきましょう。