不登校やひきこもりの子どもの自己肯定感を高めるために
不登校やひきこもりのお子さんと関わっていると、よく「自信がない」という言葉を耳にします。面談の最初でも「もしうまく行ったとしたら、どうなりたい?」と伺うと「自信をつけたい」と仰るお子さんも多い印象をもっています。実際にこれまで勉強や部活等で比較されながら育ったり、中学受験や習い事、兄弟間で比較され、社会の「勝ち組、負け組」等の言葉に煽られ続けると、嫌でも劣等感をもってしまうのは仕方ないのかもしれません。
親御さんがそういう意思で接してこなかったとしても、今の時代はYoutubeやInstagram、twitter等、芸能人でなくともフォロワー数等で他者より評価されるような時代です。同世代の子達が「影響」を持っている中、自分は・・・という発想に行ってしまうのも無理もないと思いますし、親御さんが育った時代とは明らかに異なり、これは日本だけでなく世界の傾向でもあるようです。他人が何しているのかがすぐに目に入るこの時代、どのように「劣等感」と縁を切り、「自分は自分で大丈夫」と自己肯定感を高めるかは、不登校、ひきこもりに限らず、とても重要な気がしてなりません。このブログでは、不登校やひきこもりの子達が自己肯定感を高めるために何ができるかについて考えていきたいと思います。
自己肯定感を高めることを目的にしない
まず、逆説的かもしれませんが、「自己肯定感を高めることを目的にしない」ことが重要です。少し分かりやすく説明するために例を挙げると、「痩せよう」と思ってダイエットを取り組むとしましょう。皆さんもご経験があるかもしれませんが、痩せることを目的にすると、ダイエットをしている最中、「太っている自分」がより強くイメージされてしまうこと、ありませんか?痩せること自体を目的にしてしまうと、頭の中で「今、痩せていない自分」がより印象強くなってしまうという皮肉が起きてしまうのです。これは「自己肯定感」でも同じことで、「自己肯定感を高めよう」という目的は、「今、自己肯定感が低い」という自分を強化させてしまう恐れがあります。そのため、その目的のもとに何か一生けん命に取り組んでも、結局は自己肯定感が高まらないことがよくあります。ですから、そもそも、「自己肯定感を高めたい」「自信を付けたい」ということ自体を「目的」にしない方がよく、あくまでも「〇〇を目的に△△をした結果、自信がついた」というように、「副産物」として自信や自己肯定感は扱いたいところです。
抽象的な話から「具体的な行動」の話をしていく
そしてここで注目してほしいことは、「〇〇を目的に△△をした結果」と具体的なアクションがあることです。もしお子さんが「自信をつけたい」「自信がない」というお話をしてきたら、「具体的にどんな状態になっていたら、自分には自信があると思えるのか」と抽象的なお話から具体的なお話に振っていきましょう。もし親子間で信頼関係があれば、色んなお話をしてくると思います。その時、「有名人になったら」「社会的な地位を得たら」等、今の状況では非現実的なことを言ってくる場合があると思いますが、その時は、その意見を否定せずに「他には?」と振ってみてください。私は最低でも5回は聴くと決めごとにしています。そうすると、より現実的なお話も出てくることが多いと感じています。
まずは「自分がどんな状態だったら、自信がついたと思えるのか」と具体的な目的地を明確にすること、ここから始めましょう。もし具体的な目的地が明確になったら、あとは「このくらいだったら、できるかも」と思えるスモールステップを一緒につくっていく流れになりますが、そのステップを踏む上での「不安」や「恐怖」に関しては、また別の記事で取り扱いたいと思います。因みに「具体的にどんな状態になっていたら、自分には自信があると思えるのか」と伺っても、何も返ってこない場合、もしかするとお子さんは「どうせ自分が言っても、否定されるだけ」と思っているかもしれません。「自信を付けさせたい」と親御さんが願っていても、将来、困らせたくないから「それは無理でしょ」と否定し続ける限り、「どうせ自分の意見は否定される」と「自信を付けさせたい」という願いの真逆のことを気づかずにやってしまっているかもしれません。そのため、どんな非現実的なことを言ってこようと、まずは受け止めて、それを否定せずに「他には?」と広げていく会話を心がけてみてほしいと思います。
ここではまず、①自己肯定感を高めることを目的にしないこと、そして、②抽象的なお話は避けて具体的なお話にもっていくことについて見てきました。ぜひ、この2点を頭の片隅に入れておいてほしいなと思います。