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「劣等感」の裏にあるその子の「強み」とは

これまで、インスピラードの前身である一般社団法人ストレングス協会時代より、不登校やひきこもりのお子さんとよく関わってきていますが、彼らの共通する心理状態として、「劣等感」がキーワードとして挙げられます。他人と比較し、自分は劣っていると感じるマイナスの心理を指しますが、これは不登校・ひきこもりに関係なく、劣等感をもっている子どもはSNSの発展と共に、益々多くなっているのではないでしょうか。いくら周りが「他の子と比べる必要ないのに」「人と比べる必要なんてないよ」と助言しても、社会的動物である私達にとって他人と比較しないことはそもそも不可能に近いことなのかもしれません。ここではお子さんが抱える「劣等感」という心理を、ポジティブサイコロジーという新しい心理学のレンズを通して、改めて見ていきましょう。

劣等感を強く感じている多くの方々とこれまで接してきましたが、お話を伺うと、例えば、10代でしたら、中学時代のテストで挫折した経験でしたり、20代では、同世代が会社に入って数年経つのに自分は何もしていないという経験でしたり、人それぞれ、その引き金となった過去のストーリーは様々です。従来の心理学では、彼らの苦悩に耳を傾け、共感していくことでその「劣等感」を癒したり、「自分は劣っている」という本人の中にある信念を丁寧に見ていくことで対処していました。

一方、ポジティブサイコロジーの分野には、ドナルド・クリフトン博士(米国ギャラップ社/ネブラスカ大学教授)が特定した34種の強みの元となる「資質」の分類表があります。その分類表の中には、「競争性」と「回復志向」という強みの元となる資質があります。「競争性」とは常に外部の何かと比較し、それをモチベーションとして上を目指したくなる資質を指し、また「回復志向」とは問題を見つけ、それを解決したくなるという資質を指しますが、これらの資質はまだダイヤモンドの原石のようなものであり、うまく使うと、「競争性」はライバルを見つけ、切磋琢磨しながら成長できる「強み」に、また「回復志向」は問題を見つけて解決できるトラブルシューターという「強み」として機能するのですが、まだ原石の状態であれば、「競争性」によって、明らかに自分の能力以上の人と比べて(勝手に)挫折したり、「回復志向」によって、自分の問題ばかりを探して自己嫌悪に陥るようにもなるのです。

このことが頭に入っていると、「劣等感」をもつお子さんにお会いする際、もしかしたらこの子は「競争性」や「回復志向」という強みの原石をもっているんじゃないか?自分の「強み」の使い方を間違えているだけなのではないか?という視点から関わることが出来るようになります。劣等感をもつお子さんに対して、いくつか質問をし、これらの資質が特定できれば、「もしかしたら自分自身の強みを間違って使ってしまっているかもしれないね」と適切な使い方を教えていく方向にシフトしていける可能性があるんです。なぜなら、それらはもとは自分自身を輝かせてくれる「強み」となっていくものですから。「競争性」が高いお子さんには、比べる対象を変えたり、何と比べるのかをより適切に明確にしていけば、いい意味で「競争性」が彼らの原動力になっていきます。「回復志向」が高いお子さんには、自分の直せる部分と直せない部分の線引きをしっかりさせ、「問題解決」の矢印を他者(困っている人)に向けさせるように教えていき、人の役に立つ経験が出来るように導いていきます。

このようなプロセスを歩むことで、お子さんが感じていた「劣等感」という心理は、実は「競争性」や「回復志向」という強みの「副作用」だったのかということに気づき、むしろ、どのように自分のプラス面をうまく活かそうかという考えに変わりやすくなるのです。そして、結果的には「劣等感」ではなく「自己肯定感」を高め、自分の足を引っ張っていたものが、実は今の状況から一歩踏み出すためのカギとなったりするのです。

勿論、一概には言えませんが、もし皆さんが今、関わられているお子さんが劣等感を感じていたら、一度、「強み」のレンズを通してみると、また新しい姿が見えてくるかもしれません。お子さんがいくら劣等感を感じて辛そうにしていたとしても、そこには「ダイヤモンド」が眠っているかもしれないという視点を、ぜひ忘れないでほしいなと思います。

※ 日経BPさんのウェブサイトにも、類似した内容の記事を寄稿しましたので、こちらも合わせてご参考にしてみてください。

『増える自信のない子どもたち「強み」を知って取り戻す』(NIKKEI STYLE, 2021. 3. 1)