ポジティブ心理学による不登校・ひきこもり支援
これまでの不登校支援やひきこもり支援はカウンセリングのアプローチは「病理モデル」、つまり欠陥部分を診断してそれを治すというアプローチが主でした。カウンセリングは傾聴が大事とよく耳にしますが、このアプローチを軸にした場合、子どもたちの話を聞いている時や相談を受けている時はいつでも無意識のうちに「この子のどこが原因なのか?」「何が悪いのか?」「どこが欠陥なのか?」を探してしまいがちになります。その欠点や弱み、欠陥部分を探るために、ひきこもりの青少年らの過去の話を聞いていき、原因をつきとめるために診断をしていきます。したがって、社会復帰をするためのカウンセリングも基本的には過去の話がメインになるのです。
その子の背景を知るうえで、過去の話を聞くことはとても重要なことですが、この病理モデルではカウンセリング・セッション中、往々にして、その目的が原因究明の一点となりがちです。原因を究明し、それを直すことが脱出方法だと親御さんも支援者も思いがちなのです。しかし、不登校・ひきこもりになった理由が「わからない」という子も多くいる現状があります。どれだけその子の過去の話を根掘り葉掘り聞いて、その原因を探し求めようとしたところで何も出てこない可能性もあるのです。
また、「過去」というのはすでに終わった出来事で、目に見えるものではなく、あくまでも頭の中の記憶として残っているだけなのです。過去の記憶というものはそのときそのときの解釈や心理状態によっていくらでも変わります。当初はつらいとしか感じられなかった経験も、十年後に振り返れば「あのことがあったから今の自分がある」と、肯定的に受け止められることはよくあります。このように、過去の経験の受け止め方がそのときそのときの心理状態によっていくらでも変わることは、皆さんも何かしらご経験があることではないでしょうか?そういった意味でも、過去の原因を追究したところで得られる回答というのは極めて不確かなもので、その原因を解決することが唯一の解決方法だとは思えません。過去は変えられないという視点に立ち、過去の原因を探り、そこを修正することで社会復帰させようというスタンスでは限界があると思っています。
そのため、ポジティブ心理学や解決志向アプローチは、逆にまだ見ぬ「未来」に焦点をおき、「未来が変われば、過去を変えられる」という信念のもと、お子さん達と関わっていきます。不登校・ひきこもりのお子さんが今どんな状況にいようとも、その時点をゼロ地点として、強みを武器に「これからどう生きていくか?」という「目標」を設定してディスカッションをしていきます。大まかに言えば、「カウンセリング」というよりもむしろ「作戦会議」のようなイメージでしょうか。これまで自分自身でも気づいていなかった「強み」を持ち札に、どう目の前の出来事に立ち向かっていこうか?どう望む未来を築いていこうか?というスタンスで一緒に話し合いながら進めていきます。望む未来に焦点をおいてできたアクションプランを行っていくことで問題解決していった子たちと出会うにつれ、ますます、私は「問題の解決には必ずしも原因の追究は必要ない」と思うようになってきました。
もちろん未来に重点を置くことは過去の話をしないということではありません。ひきこもりの子や親御さんの思い、そのとりまく環境を理解するために過去のお話もします。しかし、それは不登校・ひきこもりになってしまった原因を究明・診断するためのものではなく、一人ひとりがどんな思いを抱え、どんな「強み」をもっているかを探すために過去の話を聞いていくのです。そして、その過去の話から見つけた強みの種をもとに「未来」について話し合います。過去の原因を探り修正するのではなく、過去の経験、強みをもとに「未来」を一緒につくっていく。これがポジティブ心理学と解決志向アプローチの在り方です。
不登校やひきこもりであろうとなかろうと、今まで過去の原因を追究してきたけれど、何も変わっていないという方がいらっしゃいましたら、ぜひ、一度、SSBE解決志向アプローチ講座にお越しください。これまでとは違った景色がきっと見えてくると思います。