どこからが不登校・ひきこもり?
不登校・ひきこもりのお子さんの訪問支援を行っていた時、よく親御さんから「うちの子は完璧な不登校やひきこもりではないのですが・・・」「学校や職場以外の外には出られるのですが・・・」「週に1~2回は行っているのですが・・・」というお声を頂いていました。ここでは「どこからが不登校・ひきこもりというのか?」ということに関して、考えていきたいと思います。
まずは、公の機関の定義によると、「不登校」は「登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」(文科省)であり、また「ひきこもり」は「仕事や学校にゆかず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6ヶ月以上続けて自宅に引きこもっている状態」(厚生労働省)と定義されています。
この定義に従うと、例えば「保健室には行ける」「引きこもりだけど外には行ける」「オンラインゲームのイベントにネットで知り合った友人と出かけることはできる」「週に1回は学校や職場に行ける」という状態であれば、「不登校」や「ひきこもり」にはならないと思います。しかし、このような状態のお子さんは黄色信号の状態であり、私達はだからこそ未然予防のために「心のレジリエンス(折れない心)」を育てることが非常に重要だと考えます。さらに言うと、そこにこそ、従来の不登校・ひきこもり支援ではできない、ポジティブ心理学の価値があると思っています。
不登校・ひきこもり傾向のお子さんは、完全な不登校やひきこもりではなく、行動できています。その時に自分自身の「強み」をしっかり理解し、それを活かす方法を学んでいくことで不登校やひきこもりとは無縁の状態まで自力で歩いていったお子さんを何人も見てきました。自分の「強み」を理解していくと、なぜ今、自分がこのような状態なのか、自分は何を求めているのかが明確になり、自分自身や現状を受け入れることができるからなのでしょう。無理をすべき時と手を抜いていい時を自覚しはじめ、継続できるようになっていくのです。
そのため、「まだうちの子は大丈夫」と何もせずにただ黄色信号の状態を見守っていくよりも、もし本人の意思があれば、このような不登校・ひきこもり傾向のお子さんにこそ、「強み」をしっかり理解し、行動できる範囲で試していくようなご経験をさせてあげてほしいなと思います。勿論、お子さんご本人にそのような気持ちがない場合は無理に勧められるのも逆効果となりますので、あくまでもご本人の意見を尊重してほしいと思います。
「自分」とは、一生、付き合っていかなければなりませんし、誰も変わってくれない存在です。人生の早い段階で、自分の「強み」の活かし方を学び、より良く生きていってほしいと切に願っています。