中学生や高校生が留年することよりも大切なこと
不登校やひきこもりの中学生、高校生たちと関わっていく中で、彼らの主体性を育むことがいかに大切であるかを考えさせられることがよくあります。「これまで全て親が決めてきたので自分で判断ができないんです」「黙っていても親がやってくれていたんで」と、ある種の罪悪感を感じながらお話をしてくれる子さんがいます。特に今、不登校の中学生、高校生にとって、4月の新年度に向けて進級や転校について向き合わなければいけない時期、親御さんも「期限」が近づき、ご不安に感じられる方も多くいらっしゃるかと思います。
「今の学校を辞めるなら辞める。転校するなら転校すると早く決めてほしい。」
「提出書類の期日もあるんだから。」
「もう学校には拘らないからせめて高卒だけでも」
返事をしてほしいけれど、お子様から何も言ってこない・・・よくあるお話です。お子様からすると、「これまでそっちが全部決めてきたくせに、ここにきて自分で決めろって言われてもどうすればいいんだよ」と思われているかもしれません。「どうせ『こうしたい』って言っても否定してくるんでしょ」と思われているかもしれません。また、親御さんにとっても「小さい頃から物静かな子だったので、私達が全て決めてきてしまったんです」と罪悪感を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。
この状況、「鶏が先か卵が先か」で犯人探しをしても何も始まりません。もし小さい時からお子さんが活発で言いたいことを言う子だったら、親御さんも決める必要がなかったかもしれませんし、親御さんが小さい時から「どうしたい?」と待って彼らの選択を尊重していたら、お子さんも自分で決める力が身に付いていたかもしれません。この辺りは本当に「鶏が先か卵が先か」で、いくら原因を探したとしても「たられば」の世界になってしまいます。
ここで1つだけお伝えできることは、不登校の中学生や高校生でひきこもりの状態から前に踏み出し、自分の足で歩いている子達を見ていると、やはりその進むべき道は自分たちで決めています。中学生、高校生でまだ未成年とは言えども、親御さんが焦って進路を決められるのではなく、自分で決めている子達がやはり前に進み出した後も歩き続けています。過去に出会ったお子さんでも、中学高学年から不登校になり、数年間、ずっと親とも話さずふさぎ込んでいたけれど、自ら「変わりたい」と18歳の時に通信制高校に入学していった子もいれば、高校入学して間もなく中退し、1年間、誰とも話さず悶々と悩んだ挙句、自ら当会にお問い合わせをしてきてくれた子もいました。時間がかかってもお子さんが自分で決めること、これが何より大切なことだと痛感しています。
今、中学生や高校生の不登校の親御さんで進級や進路の話がお子さんと先生との間でできない、もしくは、親御さんから先生の伝言を伝えても返事してこない時、(第三者だから言えることだと重々承知していますが、)ちょっと肝据えて、「この子はどういう判断をしてくるか」を観察して頂きたいと思います。退学、留年しても、その子の人生は続いていきます。「この子、留年すると下の子達とうまくやっていけなくて、ますます・・・」「退学したらますます・・・」と親御さんが先回りしてお考えになられるより、いかに目の前の子の主体性を育んでいくかの方が「一人の人間としての成長」を考慮すると遥かに重要だということは頭の中では誰しもがわかっていることだと思います。「わかっているけど、できない」・・・ですよね。お子さんも一緒です。「わかっているけど」です。
もし、お子さんと学校以外の話題でお話できる関係性であるのなら、「今晩、魚とお肉、どっちがいい?」「何が食べたい?」等、本人に選択させる機会を与えることから始めませんか?何気ない日常生活の中で、「自分が選ぶ」という練習をさせてください。親御さんも中学生や高校生の時の自分と今の自分が異なるように、彼らも皆さんくらいのご年齢になるまで、色んな経験を積んで変わっていきます。ですから、今は周りの大人が先回りをするのではなく、本人が決める、自ら選ぶ練習をさせてほしいなと思っています。