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強みベースの不登校・ひきこもり支援とは

人は程度の差こそあれ、誰しもが自分自身の欠点や嫌な部分、つまり「弱み」に目がいきやすいものです。「自分は人間関係がうまくないから」「自分は頭がよくないから」「うちの息子は内気だから」・・・このように「弱み」ばかりに目を向けてしまう習性は人間誰しもがもっているもので、それは不登校やひきこもり、職場や家庭で問題を抱える本人だけでなく、その人達を支援するためにいるはずの学校の先生やカウンセラー、支援者側にいる人達にも言えることです。「この子は人間関係が弱みだから、ソーシャルスキルを学ばせよう」「この子が不登校になったのは、内気な性格が原因なのではないか?」などなど、保護者やカウンセラー、支援団体は不登校・ひきこもりの子どもたちと対面するとき、「その子の何が弱みであるか?」に自ずと注目してしまい、それを直すこと・修正することで学校復帰・社会復帰ができると無意識のうちに考えてしまいます。このようなアプローチは病気を診断して、治療するという医療に類似していることから「病理モデル」と呼ばれ、日本のカウンセリングや支援の在り方のほとんどがこのモデルの上に成り立っています。たしかに弱みや欠点と向き合い、それを克服することは大事なことです。

しかし、このモデルのうえで進めていくと、ひきこもりからの脱出や問題行動の改善が非常に遅いプロセスで進んでいきます。というのも、「弱点や欠点に向き合い、克服していく」というのは大人でも大変なことで、自分の弱みや欠点に向き合い、克服していくというプロセスは長い人生をかけてやっていくことだからです。また、このアプローチの最大の落とし穴は、不登校やひきこもり、または問題を抱える子どもを「一人の人間」としてではなく、何か問題がある「患者」として話が進んでいってしまうことです。このように患者ベースで支援が行われていると、その支援中、子どもたちの側には絶えず「自分は何か問題があるんだ」「自分はどこかに欠陥があるんだ」という考えが自分の中でどんどん大きくなってしまい、支援すればするほど、目には見えない形で「自分はダメなんだ」という心のチリがどんどん蓄積されていくのです。

因みに、「ひきこもり」に関して、現時点では科学的根拠に基づく的確な医学的な診断カテゴリーがないという現状もあります。勿論、幻聴が聞こえる等、精神疾患が原因で「ひきこもり」になったケースもあり、その場合は医療機関で適切な治療を受けるべきです。しかし、現在、「ひきこもり」という現象を分類できるカテゴリーがない以上、明らかな精神疾患の傾向がない場合、実際のところわからないのです。私たち人間は血液型占いや星座占いをはじめ、目の前の物事を理解するために、全てを簡単に分類したがる傾向にあります。理解できないものと共存することは居心地がよいものではなく、なんとか診断して分類して、わかる形にしてそれをのみ込もうとしてしまいます。その分類が適切かどうかわからない中、私たちは今、不登校やひきこもりと向き合っているというのが現状であり、ある文献では「ひきこもり」を患者としてカテゴリーすること自体が悪影響につながるとはっきり主張しています。このように不確かな状況の中、不登校・ひきこもりを患者としてとらえて「弱み」を探して直すというプロセスは、一見正統派のように見えますが、実は偏ったアプローチと言えるのです。

ポジティブ心理学や解決志向アプローチはこのような従来のやり方に固執しません。むしろ「弱み」に着目してそれを「直す」という従来のアプローチではなく、一人ひとりが本来もつ「強み」にフォーカスし、それを「活かす」というアプローチのもと支援していきます。不登校やひきこもりの子たち、問題行動を起こす子たちを患者としてみなさず、弱みもあるけど強みもある、同じ「ひとりの人間」として向き合っていきます。

一口に「強み」にフォーカスすると言っても、「いやいや、どうせ自分に強みなんかないから」「うちの子に特技とかないのですが」などなど、疑いの声もあるかもしれません。しかし、誰しもが人それぞれ「強み」をもっており、それに気づいていないだけなのです。

簡単に言うと、「強み」とはついついそう考えてしまうことや自然とやってしまうことなど、その人それぞれの脳のクセを指すため、誰しもが持っているものなのです。その自分特有のクセに気づいて効果的に活かしていくことで、無理なくひきこもりから一歩前に歩み始めたり、自分が望む姿へと進み始めていくというアプローチです。ある研究によると「強み」を日常生活で活かしている人は幸福度が高く、また自己肯定感や自己効力感も高いという報告があり、この「強み」ベースの支援方法は欧米諸国で多くの科学的な実証もされていますが、残念なことにまだ日本では全くと言っていいほど実施されていません。

不登校・ひきこもり、問題を抱える子たちは「欠陥」ではなく、ただ自分の「強み」に気づいていないだけ、「強み」の使い方を知らないだけという視点のもと、その人らしく次の一歩前へと歩んでいく支援は希望をもたらします。もし「強み」にフォーカスする手法について学びたい場合、ぜひSSBEキャラクターストレングス講座やSSBE解決志向アプローチ講座にお越しください。強みにフォーカスしながらサポートする手法を一緒に学んでいきましょう。