一人暮らしの大学生が「ひきこもり」になる前に
お子さんが小学生、中学生、高校生の時は一緒に暮らしていたり、担任の先生がいるため、お子さんが不登校やひきこもり状態かどうか分かりやすいのですが、大学生になると一人暮らしを始めたり、講義も毎日あるわけでなく、担任もいるわけではないので、「ひきこもり」の状態にあるのかどうか、わかりにくい状況になります。また日本の大学(特に文系)は行っても行かなくても(ちょっとした知恵と工夫で)単位が取れるものも多く、就職活動が始まるまで、正直どんな生活を送ろうとなんとかやっていける現状もあります。さらに大学生ともなると、経済面はともかく心理面では親御様の管理のもとに生きたくないと思う心情も至って自然なことです。何か部活やバイト、または課外活動等、打ち込むものを見つけていればよいのですが、何も打ち込むものがない大学生にとって「授業は面白くない、大して仲良い友人もいない、制約もない」となると大学から足が遠のいていくのも人間ですから、わけもないなと思ってしまいます。
「授業はちゃんと出てるの?」「健康管理は出来ているの?」と親御さんからご心配の連絡があっても、電話やラインでは「はい」と言っておけばその場はしのげる。まさか「行っていない」なんて言えない・・・。そうこうしているうちに学期末になり、親御さんの元に大学側から「お子様の単位が足りなく進級できません」という連絡が来て、実際に会いに行ってみるとずっと家の中にいて、外に出られない状態になっていた・・・。このような大学生の引きこもりのケースはよくある話なのです。
大学生自身も自分がただ怠けているのか、「ひきこもり」の状態になってしまっているのか、実は本人達もわかっていないことが多く、もしくは「自分はひきこもりではない」と認めたくない心情もあるため、なかなか周囲のサポートを求めにくいことが多いようです。1~2年生のうちはそれでも守られた状況ですのでなんとかやっていけますが、将来のことをいよいよ真剣に考えないといけなくなった大学3年生、4年生頃になると、気づけば動けなくなってしまったということが往々にして起きやすいのです。このような大学生を取り巻く状況や心情を考慮すると、大学生のひきこもりに対してはとにかく「早期発見・早期介入」に越したことはありません。親御さんとしてできることは、もし少し気になるのであれば、こっそり学期末に大学側に問い合わせてみるのも一つの手かもしれませんが、またもしお子さんが現在進行中でひきこもりの状態であれば、第三者と繋げることをお勧めします。
その際、明らかに身体的に何か症状がでていれば、病院に行くことをお勧めします。もちろん、状況に応じてですが、「何か問題があるから行こう」という姿勢ではなく、「何もないことを確認するために行こう」というスタンスでお話をされた方がよいかもしれません。大学生のひきこもりのお子さんの「自分はひきこもりではない」「自立したい」という気持ちを配慮することもとても重要なことだと思うからです。
また、もし身体的な症状がなく、またカウンセリングに行きたくない(つまり、自分はおかしくないと信じたい)という状況でしたら、「将来を見据えた投資」として、キャリア・カウンセリング等の将来のアドバイスをもらえる人に一度会ってもらうということをお勧めします。人は「将来のこと」等、理解できないものに対面し続けると不安や恐怖を抱きはじめ、負のスパイラルに陥りやすくなります。そのため、「将来、こういう道がある、ああいう道がある」と道標を示してくれる人に会うことで、その霧を晴らしていくことが非常に重要になっていきます。もしかすると、大学生の引きこもりは、「治療」よりも「投資」と捉えられる方が本人たちも気が楽に周囲のサポートを求めることができるかもしれません。「引きこもり」だから「心のカウンセリング」とすぐに飛ぶのではなく、「キャリアを築いていくためのコンサルティング」のような機関も考慮に入れられるのはいかがでしょうか?
大学生は、まだまだ「若さ」という財産があります。浪人をしたり、留年をしたりするとたった数年の差で「もう人生が終わった」と思い込んでしまうような空気がこの日本社会にはあります。大学生のお子さんが一人で悩み込まずに、当スクールでも構いませんので、社会的なリソースを活用して、第三者に繋がる機会を探し、ぜひ「投資」という形でお話を進めて頂きたいなと思います。